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お知らせ

令和7年度 伊藤學賞・技術功労賞の受賞者決定

 わが国の鋼橋技術の進歩・発展に貢献・寄与された方を称える「伊藤學賞および技術功労賞」の受賞者が、以下のとおり決定しました。
 表彰式は令和7年10月3日(金)開催の当協会東京地区「橋梁技術発表会(銀座ブロッサム 中央会館 ホール)」にて行ないます。

伊藤學賞:三木 千壽 氏

東京都市大学 名誉学長

 三木千壽氏は、1972年に東京工業大学助手として採用されて以来、約50年にわたり一貫して鋼橋の疲労に関する研究に従事されてきました。当時、鉄道橋では疲労設計が当たり前に行われていた一方、道路橋では疲労は起こらないと広く認識されていた中、道路橋への疲労設計の必要性を早期に訴え、供用中の橋梁で発見され始めた疲労損傷に対して、損傷メカニズムの解明や疲労強度向上のための設計手法の開発に取り組まれました。あわせて、疲労損傷の非破壊検知技術、補修・補強技術の開発と体系化にも尽力されました。これらの成果は著書や学術論文等により公表され、土木学会賞をはじめとする多くの受賞によって高く評価されています。また、疲労設計法は道路橋示方書や便覧などにも取り込まれ、実務への適用が進みました。
鋼橋事業の発展への貢献に対しては、氏の研究人生が本州四国連絡橋事業とともに歩んだと言っても過言ではありません。1970年に事業の着工が決定され、多くの鋼長大橋において高度な設計・製作技術が求められる中、特に瀬戸大橋では道路鉄道併用橋であるがゆえに高い疲労強度が必要とされました。調質鋼弦材角継手の製作・溶接技術の開発および技術指導を通じて、事業の完成に大きく貢献されました。また、都市高速道路橋梁において深刻な課題となった鋼床版疲労や鋼製橋脚隅角部疲労に対しても、損傷探知技術の開発、補修・補強技術の整備、耐久性向上構造の提案などによって安全性の向上に寄与されました。
土木学会、日本鋼構造協会、日本道路協会などにおいて委員・委員長を歴任され、構造工学、鋼構造学、橋梁工学分野における研究・技術開発の推進と学協会の運営に貢献されました。さらに、国土交通省、地方自治体、高速道路会社、鉄道事業者、学協会に対して技術的助言を行い、鋼橋事業の進展を支えられました。
大学では多数の学生・留学生を指導され、学位取得者の輩出に尽力されました。海外の大学との連携を通じて、学生の交換留学や海外授業の開講などに取り組まれ、構造工学分野の国際化を推進されました。とりわけ、アジア地区の大学間における模型橋梁コンペティション(通称:アジアブリコン)を創設されたことにより、学生の鋼橋への関心を喚起し、国際交流の促進を図り、国際的視野を持った将来の橋梁技術者の育成に貢献されました。
このように、長年にわたる研究と実績を通じて、鋼橋の設計、製作、補修・補強技術の分野において顕著な業績を築かれ、日本の鋼橋技術の進歩・発展に多大な貢献を果たされました。

三木 千壽 氏

技術功労賞:小西 日出幸 氏

日本橋梁株式会社 技師長

 小西日出幸氏は、日本橋梁建設協会設計小委員会を中心に、橋梁技術の発展と技術者教育に長年尽力されました。また、2003年より構造技術部会委員として「橋梁形式選定マニュアル」の作成に携わり、その後も協会発行の技術書籍や設計資料の編集に従事されました。
2012年には設計小委員会副委員長兼関西部会長に就任し、2017年に行われた「道路橋示方書」の改定にあたっては、設計上の留意事項を取りまとめ、構造懇話会等にて技術的な解説講演を行われました。これにより、実務者への情報発信と技術理解の促進に大きく寄与しています。また、近畿地方整備局が主催する研究会にも継続的に参画し、鋼橋の疲労亀裂調査、鋼床版の耐久性向上、損傷調査手法の高度化など、多様な研究テーマに取り組んで来られました。
2019年には日本鋼構造協会において共同論文を報告し、大阪府立狭山池博物館での一般向け講演などを通じて、土木技術の魅力を広く発信する活動も行われています。土木学会では若手技術者向けの「構造基礎講座」にて講師を務め、塗装技術分野ではIH塗膜剥離工法に関する有害物質の調査にも尽力されています。
また、鉄構塗装技術討論会などの場では、防食技術に関する調査結果を積極的に発表し、鋼橋保全に関わる技術開発と知見の共有に貢献されました。
上述のとおり、小西氏は日本橋梁建設協会および鋼橋分野に多大な貢献を果たしてきた技術者であり、その功績は土木工学分野の発展において特筆すべきものであり、鋼橋技術の進歩・発展に大きく貢献されました。

小西 日出幸 氏

技術功労賞:掘井 滋則 氏

株式会社横河ブリッジ 理事(フェロー)

掘井滋則氏は、2014年から2025年にわたり、日本橋梁建設協会の設計小委員会において設計部会長ならびに設計小委員長を歴任し、長年にわたり委員会の円滑な運営と議論の活性化に尽力されました。 また、日本道路協会では橋梁委員会をはじめ、性能評価・診断小委員会、耐震設計小委員会、主桁WG、伸縮装置WGなど多岐にわたる委員を兼任され、日本橋梁建設協会を代表する立場で道路橋示方書等の改定に深く参画されました。
2017年道路橋示方書(H29道示)の改定では、大幅な体系変更により設計現場に生じるであろう混乱をいち早く想定し、実務者が円滑に適応できるよう準拠した計算例の企画・執筆を主導されました。これにより、設計思想の理解促進と技術者教育の面でも多大な効果を生み出し、関連テキストの発刊や論文の発表などを通じて鋼橋技術の普及に大きく貢献されました。 加えて、全国講習会では自ら執筆・講師を務め、改定内容の要点や設計実務への展開を明快に解説され、多くの技術者の理解向上に寄与されました。
こうした改定成果の普及支援に加え、日本橋梁建設協会が発行する各種テキスト類の改訂にも尽力されました。 国土技術政策総合研究所や土木研究所と連携しつつ、記載精度の向上や構成面の改善に取り組まれ、「合成桁の設計例と解説」および「鋼橋伸縮装置設計の手引き」など複数の技術資料において執筆・改訂を担当されました。
2025年に予定されている道路橋示方書の改定に向けても、先行して試設計に取り組まれ、設計基準案の整理と検討に貢献されるなど、次世代設計体系の構築にも寄与されています。
さらに、日本橋梁建設技術発表会においては、2014年から継続的に実行委員として参画され、2023・2024年度には副委員長として発表内容の精選や運営体制の強化に取り組まれました。 自身も登壇者として、「H29道示」の改定に関する発表を行うなど、広報および普及活動の両面から技術展開に貢献されました。
以上のとおり、掘井氏は道路橋設計基準類の改定とその実務展開支援を通じて、日本の鋼橋技術の進歩・発展に極めて大きな役割を果たされました。

掘井 滋則 氏

【問合せ先】

一般社団法人日本橋梁建設協会 事務局

TEL.03-3507-5225 FAX.03-3507-5235