伊藤學賞:森 猛 氏
法政大学 名誉教授
森猛氏は、1982年に東京工業大学工学部土木工学科助手として採用されて以来、40年以上にわたり鋼橋をはじめとする鋼構造物の疲労、安全性および維持管理に関する研究に従事されてきました。道路橋における疲労設計荷重の評価に早くから取り組み、交通流シミュレーションを用いた合理的な疲労設計荷重の提案を行うとともに、溶接継手の疲労強度評価や溶接止端部の仕上げ・ピーニングなどによる疲労強度改善技術に関する研究を推進されました。これらの成果は、『鋼道路橋の疲労設計指針』、『鋼構造物の疲労設計指針』および『道路橋示方書』などの基準類に反映され、我が国の鋼橋の疲労設計および耐久性向上技術の発展に大きく貢献しました。また、疲労き裂の補修・補強技術、鋼床版の疲労問題、高力ボルト摩擦接合継手の強度評価など幅広い研究成果を挙げられ、その業績は土木学会論文賞、日本鋼構造協会論文賞など数多くの受賞によって高く評価されています。
鋼橋事業の発展への貢献としては、鋼構造物の維持管理技術の向上と技術者育成に果たした役割が特筆されます。鋼橋などの維持管理に携わる技術者の資質向上を目的として創設された「土木鋼構造診断士」資格制度においては、制度設計から運営体制の構築まで中心的な役割を担われました。同制度は現在、国土交通省が認定する技術者資格として広く活用されており、鋼橋をはじめとする社会基盤施設の適切な維持管理に大きく寄与しています。さらに、国土交通省、高速道路会社、鉄道事業者などの委員会において技術的助言を行い、鋼橋の安全性向上と長寿命化に貢献されました。
土木学会、日本鋼構造協会、日本道路協会、国際溶接学会(IIW)などにおいて委員・委員長を歴任され、鋼構造分野の研究・技術開発の推進と学協会活動の発展に尽力されました。特に、『高力ボルト摩擦接合継手の設計・施工・維持管理指針(案)』や『鋼床版の疲労』など、実務に広く活用される技術資料の策定を主導し、鋼橋技術の普及と高度化に大きく貢献されました。
また、法政大学において長年にわたり構造工学・鋼構造学の教育・研究に携わり、多くの学生を橋梁・鋼構造分野へ輩出されました。大学退職後も講演会や技術講習会、各種委員会活動を通じて後進の育成に尽力され、鋼橋技術者の育成と技術継承に大きな役割を果たされています。
このように、長年にわたる研究と実績を通じて、鋼橋の疲労設計、維持管理ならびに耐久性向上技術の分野において顕著な業績を築かれ、日本の鋼橋技術の進歩・発展に多大な貢献を果たされました